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Hello
(スピンオフ作品のキャラが出てます)
スピンオフ作品▶ https://estar.jp/novels/25532852
「あんなとこ無理だ。行けない」
「まあ、その気持ちはわかる……」
謙吾がひるむように後ずさる。
ホテルのロビーの一角で、謙吾と汐月は声をひそめて話していた。
二人とも高級ブランドの服を着ているが、それぞれ大切な人にもらった物だ。
「あんな雰囲気の中に入れないって……俺があそこに行ったら、完璧な雰囲気が崩れる気がする」
「それ、俺もよくリアムに思うなあ」
汐月と謙吾の視線の先、観葉植物に囲まれて周りから見えづらくなっているスペースに、エヴァンとリアムが座っている。
二人が高級なソファに座って、軽く笑いながら話す様子は、映画のワンシーンみたいだった。
堂々とする彼らとは反対に、謙吾は落ち着かない。こんなことなら、デート場所をおまかせするんじゃなかった、と後悔していた。
◇
「何をしているんだろうな」
「さあな。エヴァンの格好が気合い入りすぎていて近寄り難いんじゃないか?」
エヴァンとリアムはふっと笑みを零す。なかなか近寄ってこない汐月と謙吾の様子を楽しんでいた。
「リアムこそ気合い入ってるだろ。それに服の趣味が変わったな。前はそういう色を着なかっただろ」
「シヅキはこういうほうが好きみたいだからな。服の趣味が変わったのはおまえもだろ」
「ケンはこういうのが好きみたいだから」
小さく笑い合った二人は、いま気づいた、というような動作で、汐月と謙吾に顔を向けた。
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