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EP1.
「いってらっしゃい!」
息子と夫を送り出し、洗濯物を干した。そしてできるだけ薄く、メイクを施す。職場では結構汗をかくため、ファンデーションなんて塗って行ったらドロドロに溶けてしまう。そのため日焼け止めの上にフェースパウダーをはたき、眉毛を書いたところで終了だ。
今年で35歳になる肌は年相応に弛み、目尻には新しいシワ、頬にはいくつかのシミが浮いていた。こんなに薄いメイクでは隠しきれる筈がないのだが、私はただの主婦であり、平日はパート先とスーパーくらいしか行かないのだから構わない。
「よしっ今日も頑張ろう!」
玄関の鏡に映る平凡な主婦に笑いかける。これが赤石佳世のルーティーンだ。
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