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帰りに偶然遭遇した三好が、やたらはしゃいだ様子で、ハンバーガーショップ行こうっつうから、店に入った。自動ドアくぐったらクーラーがガンガンにきいていて、セミの鳴き声の代わりに、流行りのラブソングが響きわたった。
「あー。涼しー。冷蔵庫みたい」
三好が制服のスカートを気にしながら、椅子に座った。俺はその向かいに腰かけて、ハンバーガーにかぶりついた。
「なんか食わねえの?」
三好のトレイに乗っているのが、パックの野菜ジュースだけってことに気づいて尋ねた。三好は、にへへ、と笑って
「あたしね、これから先輩と会うんだよね。そんとき多分なんか食べるから」
「ふーん」
「でも、半端に時間あるからさあ。涼しいとこで待ってようと思って」
「ご苦労さまです」
「何それ」
三好が野菜ジュースに口をつけた。ストローからくちびるを離すと、じゅっと間抜けな音がした。
「それにしてもなんで野菜ジュース? うまいの、それ」
「体へのやさしさだよ。やさしさ」
三好は俺のポテトをひょいとつまんだ。
俺はコーラを飲みながら、なんとなく窓の外を見た。ハンバーガー屋は三階にあったので、下を見下ろす形になった。似たような黒い頭がぞろぞろ移動しているばっかりで、面白くもない眺めだった。
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