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プロローグ
200X年の春ごろだったと記憶しています。
私と弟子のタカはバンコクのカオサンロードのオープンカフェで食事をしておりました。
私たちのテーブルには、先ほどから見ず知らずの日本の若者がかってに座り込み、くどくどと話し掛けてきています。
若者はふたりいて、ひとりは椅子に座り込みひとりはなぜかその横に突っ立ってにやにやと笑っております・・・ガンジャか酒に酔っているのでしょう。
座っている方のおしゃべりは止まりません。
「俺たちさあ。南米もインドもアフリカも行ってきつい旅してきたんだ。本当の旅ってのはなんだかさあ、分かってきたんだよ。お兄さんたちは・・・ん?タイだけ?タイなんて旅じゃないでしょ。本当の旅をしなきゃ。いい歳なんだしさ」
かつては白人の町といわれたカオサンロードも、今ではタイの渋谷センター街といわれるほど日本の若者でいっぱいです。地べたに座り込んでる若者もいます。
私もトシを食いましたので無礼な若者の振る舞いも軽く受け流す心のゆとりが出来てきております。
「で、君たちはいつまで旅をつづけるんだい?」
若者は名刺をとりだして見せます。大手商社の名刺です。
「就職がきまったんでね。こんどは新しい遊びをやろうと思ってるんだ。まあ新しい旅の始まりってとこかな?わかる?お兄さん」
いちいち無礼な奴ですが・・・なに、こんなことで腹を立てるほど私は幼稚ではありません
・・・・が、ふとタカの顔を見ると・・・ヤバイ!キレてる・・・・。
ここで話は10年ほどさかのぼります。
私は私の空手の先輩であり師匠でもある中川先生に与えられたスリランカでの任務を終了し(このへんの話が見えない方は前作「空手バックパッカー放浪記」をお読みください)日本へ帰国しておりました。
帰国後2年ほど現場仕事をしていた私は、こんどは自分で商売を始めようと考えました。
そこで手始めに、タイでバイヤーをしている知人の中田さんの仕事を手伝っていたときに手に入れた品物を売ることにしました。
もちろんお店を出す資金などありませんので、あるひとの紹介で露店の張れる場所を世話してもらったのです。
そこには何軒もの露店がでておりました。私のとなりはたこやきの屋台です。
焼いているのはするどい目をして人を近づけない雰囲気をもった少年。
・・・・・17歳のタカでした。
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