空手バックパッカー子弟発進

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空手バックパッカー子弟発進

それから半年はあっという間に過ぎ去り、私たちの露店街も閉鎖となり、私とタカは失業ということになりました。 まあ、あとはなんとかなるだろう・・・ということでひとまずタカを連れてアジアの旅に出ることにしました。 その前に・・・ひさしぶりに私の空手の先輩であり師匠でもある中川先生に電話をかけます。 「もしもし押忍。あのう、冨井ですが。ごぶさたしております」 「おお、冨井か。ひさしぶりだな。ところでお前、ブラジルに行かないか?」 「行きませんよ!」 ・・・あいかわらずだ・・この人。 「それよりちょっとお願いがあるんです・・・実は今、うちに若くてイキのいいのがいまして、タカというんですがね。これがかなりいい線いってるんで、初段くらいは実力あると思うんですよ」 「ふーん。そうか。じゃ、審査料と昇段料を振り込んでくれ。あとで帯と免状送るから」 これで中空会の昇段審査は終了。通信販売みたいだ。 「ところでお前は?弟子が初段で師匠が初段じゃかっこつかんだろう?後輩のデワなんか、あれで一応支部長だから3段ということになってるぜ。お前もとりあえず2段あたりどう?」 「いえ、僕は実力ないので結構です」 ・・お金のムダだ。 「それより今度、タカといっしょにアジアを旅行するんで、ついでにちょっとデワのところにも寄ってみようかと思うんですが」 「わかった。じゃあむこうに伝えとくよ。ついでにあいつ生徒の数ごまかしてないか見てきてくれ。どうもいまいち信用できん、あいつは」 「押忍。わかりました」 さて、こうして私とタカはスリランカとタイを旅することになりました。 タカははじめての海外・・・それどころか旅行というものをろくにしたことがないので、やたらと緊張しております。 「師匠、荷物とかは何持っていったらいいですかねえ?」 「パスポート、チケット、お金。これさえあればなんとかなる」 「薬とかは?」 「タイで買うから大丈夫。着替えのTシャツとか下着とか・・それと道着。それだけあれば十分だ。あんまり荷物を増やすなよ」 「押忍。わかりました」 私はお供をつれての海外旅行は初めてでした。 いや、本当にこのときはただ単純に楽しい海外旅行するつもりだったんですよ。 それがまさかまた、以前のように冒険満載の空手バックパッカーの旅になるとは。 しかし、なんで私は普通の観光旅行が出来ないんだろうなあ。。。
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