組手

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組手

一般的な道場組手には二通りありまして、ひとつは黒帯・茶帯・緑帯の上位ランクの帯と黄帯・青帯・白帯の下位ランクの帯で組む(つまり3ランク以上の実力差の組み合わせ)この場合上位の帯の者は受け手にまわり本気で下位の帯の者を攻めない建前になっています。(実際は人によりますが) もうひとつは同じランクの帯のものどうしが組む場合で、こちらはお互い真剣に戦います。 今回は大体同ランクの組手を見せてもらうことにしました。 え?私ですか?私は・・・負けたらシャレにならんのでやりませんよ。 組手のレベルはやはり低いです。最初に教えたのが私ですから私の責任なんですがこれじゃまるでブルースリーごっこのレベルです。 まあ、そのなかではたしかにプレディの組手は見ていて面白いです。 蹴りが得意な某流派に居たらしく、スピードのある蹴りを派手に連打します。 同じ下位ランクの中では飛びぬけているし、ここの黒帯でも相手にならないのは分かります・・・といって彼が強いのではなくここの連中が弱すぎるのですが。 一方、タカのほうは黒帯を相手にしておりますがまったく手加減してやっています。 それでもここの黒帯は壁まで押されてしまう。話になりません。 面白くないのでそろそろ・・・と。 「あ、君。プレディ君。君は強いなあ。前はどこにいたの?」と声をかけます。 「オッス。**会でやってました」・・本当は知っていたんだけど。 「いやあ、君の実力は十分黒帯だねえ。どう、よかったらうちのタカといっぺんやってみない?」 と水を向けます。すると。 「オッス!ぜひやらしてください」自信満々です。 「タカ、あいつ天狗になってるからちょっとやっちゃっえよ」 こんどはタカにハッパをかけます。私も悪人だなあ。 「え、本当にやっちゃっていいんですか?」 「うん。まあ、下の者なんだから適当に加減してだなあ・・まあ、そこらへんはタカの判断でということで」 「は?やっていいのか悪いのかよくわからんですが・・・じゃ適当ということで」 「うん。そうしてくれ」 ここで私はふと、かつて始めてスリランカに旅立つ前に中川先生に言われたことを思い出しました。これだけはタカにも言っておかねば。 「そうそう。タカ。言い忘れたけどね・・・まあタカのことだから大丈夫とは思うけど、絶対に負けちゃだめだよ。負けたらここに日本人の空手家が負けたという話が残ってしまう。そうなったら我々だけの責任じゃすまないからね」 「押忍。大丈夫っすよ」 ここで一応もうひとつ念を押して。。 「万が一だけど・・・もし負けそうになったら・・」 声を強めて・・・ 「どんな卑怯な手段を使っても絶対に勝てよっ!」 
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