事の顛末(てんまつ)

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事の顛末(てんまつ)

「中田さん、うまく逃げましたか?」と私。 「ええ、もうとりあえずプラーを部屋に残したまま飛び出しましたから。プラーは怒ってても泥棒じゃないから、商品には手を付けないでしょう。。。しかし・・・プラーの友人には荒っぽい連中もいますから、早く彼女と話つけないと、僕らもおちおちバンコクを歩けなくなりますねえ。。。」 「話つける・・っても、なにがこんなにこじれちゃってるのか?全然僕には分からないんですけど、説明してもらえますか?」 「まあ、話せば長くなりますが・・・まず、お店閉めるときまではトミーさん、一緒だったでしょう。お店の商品の一部はトミーさんがナライパン(バンコクの国営民芸デパート)のテナントに営業かけて売ってくれたけど、残りの在庫はひとまず僕の定宿の部屋に運び込んだままでした。でもほら、僕はあそこに定住しているわけじゃないから、ずっとは置いとけないじゃないですか」 「あ!!」・・・すっかり忘れてた。。 お店の在庫はナライパンに卸して回って、ずいぶん減らしたんだけど、それでもまだ結構な量がありました。それを中田さんの部屋に運び込んで・・・・ 私は日本に帰っちゃったんだ。。 「でね、しかたがないからプラーのアパートに預かってもらうことにしたんです。1ヶ月に1000バーツ払うという約束で。その分はナライパンからのリピート・オーダーの売り上げでまかなおうと思いまして」 なるほど・・・しかし、ということは。。 「中田さん。。。まさか、その約束のお金、払ってないんじゃ。。」 中田さんは、言いにくそうに苦笑いを浮かべながらコーヒーをひとすすり。。 「実は、そうなんです。トミーさんが帰ってから、プラーとは一時ヨリを戻してたんですよ。プラーのアパートに住んでたしね。そうなると普通、払わないでしょう?他人行儀だし。生活費は入れてたんだから。プラーもすすんでナライパンに配達したり、集金に回ったりしていましたし」 そこまで聞けば、あとの事態は想像が付く。。 「中田さん・・・浮気しましたね。。」 中田さんは、心外な・・というのと、図星をつかれた・・というのが入り混じった複雑な表情で。。 「いいですか?トミーさん。僕は日本には、ちゃあんと妻も子もいるんです。つまり、プラーとも浮気なんです。それを今さら、浮気を責められても。。」 ・・・どう言う理屈だ。。 「まあ、とにかく僕が別の女と会ってるのがばれちゃいましてね、プラーがあの調子で怒っちゃったんです。そうなると、いままでナアナアになっていたお金の問題が再燃しちゃった。。。さあ、いますぐ払えって」 ・・・そりゃ、しかし、プラーに理があるよな。。 「払えばいいじゃないですか。しれてるでしょ金額は」 「ちょうど12か月分ですから、12000バーツ。ただ、やはり坊主憎けりゃ・・・いや、かわいさあまって・・かな?その間、彼女が僕に奉仕した分、給料として払えと言ってるんです。これが月3000バーツで36000バーツ。あわせて48000バーツですよ!それはいくらなんでも高いでしょう?で、それを値切ってたのが、あの現場です」 ・・・はああ。。何を言ってる。日本なら、女性問題がそれくらいのカネで片付くわけないんだから。。。 「払いなさいよ。第一、それは僕には関係ないじゃないですか」 「ところが彼女はそうは思ってない。商品をナライパンに売り込んだのはトミーさんの仕事・・つまり、彼女が配達・集金をしてたのはトミーさんの仕事なんです。それにトミーさんだって、在庫管理については責任の半分はあるでしょう?」 ・・・そう言われれば、たしかにそれを放って帰ったのは、私にも負い目があるけど。。 「商品を全部プラーにあげちゃったらどうです?ナライパンからのあがりでガマンしてもらえば。。」 「ナライパンのあがりなんて、しれてますよ。それを得るために、これからも受注、配達、集金をする気なんて、彼女にはサラサラありません。それなら別の仕事をしますよ」 ・・・そりゃそうだ。しかし。。。 「それならば、やはり中田さん。払うしかないですね。僕が噛んでいるのはナライパンに最初の納品をするところまでですから、それ以降の売り上げに関しては全然タッチしていません。もっとも最初の売り上げも赤字を埋めるのに使っただけですけど。。。以後の売り上げ分でプラーに払ってください」 「もちろん払います。けど、ナライパンにはもともと捨て値で出していますから、赤字がすべて埋まったわけじゃないでしょう?プラーの言い値はとても払えない。それに、あまり言うことを聞きすぎるとナメられます」 ・・・そうは言っても。。。 「トミーさん。ここは僕にまかせてください。明日中に電話して、ちゃんと話を付けます。僕もいつまでもこの問題を先延ばしにはできませんから」 ・・・まあ、そういうことなら。。。 「中田さん、今夜はどこへ?」 「プラーは僕が泊まりそうなところは、大体知ってますから。話が付く前に見つかったらヤバいですし、カオサンにでも泊まりますよ。まさか僕がカオサンに泊まるとは思わないでしょうから・・・また明日にでも、トミーさんのホテルに連絡入れます」 「了解しました。うまく話、収めてくださいね。。。」 そして中田さんは店を出てタクシーを拾い、夜の街に消えていきました。 サリカカフェで追加のコーヒーを頼んで、一息つきます。。。 「師匠。。」タカがようやく口を開きます。 「オレ、このままじゃすまないと思う」 ・・・何を言うか、この名探偵コナンは!! 
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