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森に棲む者。
「マリア」
体の大きな母がマリアを呼んだ。
森の中に建つ大きな屋敷は、森の大きな木々の覆われている為、昼間でも薄暗い。今は夕暮れ時。大きな広間は、吹き抜けとなっていて、十七・八人は座れそうな、大きなテーブルに置かれた燭台の蝋燭の光も天井までは届かない。
二階の高さに設けられた窓から、青白い光が差し込み、そのせいで天井がより暗く感じる。見上げればどこまでも、闇だ。
その大きなテーブルに体の大きな『母』と二人、向かい合って座るマリア。
母は続ける。
「学校はどうだい?楽しいかい? 」
マリアは嬉しそうに微笑み、頷く。クラスのみんなが優しく、マリアを歓迎してくれた事。聞く話が全て新鮮で、ワクワクする事ばかりだって事、そして、ノアと隣の席になれた事。
そして、ノアと話が出来て、一緒にいることがこんなに楽しくて、嬉しくて・・・
マリアは、今日の出来事を興奮しながら母に話した。
母は
「そうかいそうかい。それは良かった」
そう言って笑った。
母が続ける。
「お前が本当に人間になるためには、お前を、自分の身を犠牲にしてでも守ってくれる人間を見つけないといけないよ。そうでないと、魔法は完成しないんだ。
だから、その子がお前を想う気持ちが本物かどうか、試さなくちゃいけない。分かるだろう? 私の可愛いマリア」
口元に笑みを貼り付けて、母は言った。
もし、お前の選んだ者が試練に打ち勝ち、自分の身を挺してお前を護ることが出来たなら、お前はその時本当の人間になれる・・・と。
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