初デート

「そら、トミカやってフェスぐらい主催するやろう。大きい会社やし」
「いやプラレールに引っかかったわけやないんや。お前がフェスって言うから、てっきり俺は、音楽系のフジロックとか、ああ言う感じのミュージシャンがいっぱい出るやつを想像したんや」
「俺はな、娘がどんなとこ行くのか、どんな話すんのか心配で心配でしょうがないんや」
「そんなこと言うたって、近頃はちょっとネットで検索したら初デートのマナーぐらいは書いてあるやろう。それ読んで奥さんと相談しながらシュミレーションしてたんちゃう？」
「あんなんネットに書いてあることとか全部嘘やで。フェイクニュースばっかやで」
「いやそりゃ嘘も多いかもしれへんけど、役に立つ情報もいっぱい載ってるから」
「まず初デートでは女子はスカート禁止。これは守って欲しいね。
「なんでなん。女子っぽさアピールしたい子もおるやろう。まあ普段はきなれてなかったら、無理せんでええとは思うけど」
「あほ、スカートなんかはいて行ったら、安い女やと思われるやんけ」
「いつの時代の話やねん。昭和初期か！」
「それと男子は安易に女子の荷物を持ったらあかん」
「ええやんけ。別に。重そうな荷物やったら持ってやったらええやん。その方が優しいかんじで印象がええやん」
「あほ！そんなんしたら女子になめられるやろ。日本男児たるもの、婦女子の荷物なんか、軽々しくもてるかいな。だいたい女子も女子で簡単に人に荷物を預けるなんて、そいつがネコババしたらどないするんや。急に走り出されたら追いつかれへんやんけ」
「だからいつの時代の話。戦後すぐなん。もうちょっと人を信用したほうがええんちゃう。初めてのデートで彼女の荷物から財布とか抜く？頭おかしいって、そんなやつ」
「携帯は触ったらあかん。怪しまれるからな」
「まあそうやな、一般的にデートで携帯ばっかり見てたらヤラシイわな。興味ないと思われるからな」
「だから鞄の中に入れといて、ずっと会話録音しとくねん。そしたら後になってもめた時に、証拠として使えるやろ」
「何やってんの、お前！刑事なん。弁護士なん。いったいどんな人生送ってきたんや。初デートの会話録音して、証拠として取っておくなんて最低の行為やで」
「でもあの時、マサルくんサッポロポテトのバーベQ味が好きって言うたやん。今さらカールのうす味が好きって言われても、関西にしか売ってないやん、ってもめた時の証拠がいるやんけ」