まひるの誕生日

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考えてみれば、私達は、部屋に準備してもらった朝食にほとんど口を付けなかった。 何故?って聞かれると、初めての事を始める前の緊張感とワクワク感?だと答えるしかない。 ミチャに限っては、緊張感の方が勝っていると思うけれど。 それだけ、私とミチャにとって、海水浴というレジャーは馴染みのない未知の領域だった。 そんな私達は緊張感から解放されて、今、夢中でご馳走を食べている。 「ねえ、まひる… こんなにお腹いっぱいになったら、しばらくは海には入らない方がいいと思う。 ちょっとだけ休憩しよう」 「休憩? まだ、何も始めてないのに?」 私は可笑しくて、飲んでいたソーダを吐き出しそうになる。 「いいんだ。 ここから見える海の雰囲気を僕はすごく気に入ったし、テラスを全開にすれば潮の香りもさざ波の音も手に取るように分かる。 それに、果物もケーキも、まだたくさん残ってるしね」 私とミチャはよく似てる。 私だって、そう思っていた。 このコテージは、このホテルの敷地内で一番眺めのいい場所にある。 全てが自然のままで、どの角度から切り取っても、そこには美しい沖縄の壮大な海と空のグラデーションが広がっていた。 だからこそ、ホテル側はこの場所にコテージを建て、最高のロケーションをVIPのお客様にお届けしている。 インドアの人間が無理に海へ入らなくていい。 インドアの人間はインドアの人間なりの海の楽しみ方があるんだから。
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