秋分の日(風磨の引退試合)

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秋分の日(風磨の引退試合)

雲一つない真っ青な空が続く秋晴れの今日、私とミチャは、都内の山側に位置するラグビー場へ車で向かっている。 風磨の最後の試合を観にいくためだ。 風磨は、高校、大学、社会人の間、ラグビー選手として活躍してきた。 足が速く、俊敏性に長けていた風磨は、左ウィングのバックスとして多くのトライを決めてきた。 でも、三年前に膝の大けがをして以来、レギュラーとしてプレイする機会はなくなり、最近では、自らが率先して選手の体のケアやサポートに尽力してきた。 そんな風磨の最後の勇姿を目に焼き付けるため、ミチャと私はラグビー観戦を楽しみにしながら車を走らせた。 ミチャの愛車は快適に高速道路を走っている。 カーナビをそのラグビー場にセットしてナビの言う通りに車を走らせるミチャは、どこかご機嫌に見えた。 「ミチャは、今まで風磨の試合を観に行った事はあるの?」 ミチャお気に入りのユーミンの中央フリーウェイをBGMに流しながら、私は何となくそう聞いた。 実は、ユーミン好きは私も一緒だった。 母の趣味がいつの間にか自分の好みになり、自分が生まれる遥か昔に流行った曲を懲りずによく聴いた。 周りの皆には古臭いと言われながら、意地で好きを貫いてきた事は無駄じゃなかった。 だって、ミチャもユーミンが好きだなんて、こんな偶然には中々出会えない。 というわけで、ドライブにピッタリの一曲としてこの曲を二人とも選んだのだった。
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