歪み始めた愛

1/1
前へ
/3ページ
次へ

歪み始めた愛

それは突然に起こった。 何気ない一日。 君と出掛けたというだけの所謂「ケの日」。 放さないように、離れないようにと固く繋いだその手は、その実、簡単に解けてしまった。 もう届かなくて、掴めない君の手。 諦められなくて、認めたくなくて。 だから私は願った。祈った。 神に、仏に、悪魔に、怪異に。 誰でもいいからと、助けを求めた。 果たして祈りは、願いは、誰あろう怪異に届いた。 その人は、その「人の姿をした怪異」は、自らを「吸血鬼」と名乗った。 人の血を吸う化物、人類の天敵。 しかし、そんな事はどうでも良かった。 君と居られるなら、どんな手でも。どんな代償でも。 覚悟はとうに出来ている。 しかし、吸血鬼は代償を求めなかった。 「待て、しかして希望せよ」とこそ言わなかったが、私の希望はここに叶った。 私は泣いた。 君と居られる事が嬉しくて。 ただそれだけで満ち足りて。 だから変わってしまった君に気付かなくて。 そう、少し前の私と同じ。 君もまた、「死なない私」を欲しがっている。 そして、その(すべ)を手にしているというのは、また別のお話。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加