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「これを飲め、疲れが取れる。」
ファラトは、アザンから渡された緑色のビンを傾けた。
「んんっ……これは薬草?」
ファラトは、鼻へ抜ける爽やかな香りに目を見開いた。
「そうだ。これは、ミントという薬草を煎じたモヒートという酒だ。」
「酒なのか……?」
「それほど強くはない。だが、砂漠の夜は冷える。酒で温まってから寝た方が良いからな。」
アザンは、干し肉を軽く火で炙ると、ファラトに渡した。
ジュッ……
熱い干し肉を噛むと、肉の旨味と香ばしい香りが口内に広がる。
「干し肉は、炙ると美味しいんだ……」
「お前もやってみろ。」
干し肉を手渡され、ファラトはアザンを真似して炙ってみた。
熱い干し肉を頬張りながら、頭上を見上げると、すっかり日も暮れ、多くの星々が瞬いている。
(カストル神官が見たら喜ぶだろうな……)
カストルは、星を読み、未来を予知する能力に長けていた。
いつも惑星の位置や、星々が描かれた書物を広げ、夜になると星見の塔に上がり、一晩中下りてこないこともあった。
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