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「……くっ‼」
バルドは苛立たしげに腕を組んだ。
(グノス王と王妃は毒酒を煽り、自害した。最期まで刃向かった皇太子はこの手で始末し、グノス王族は途絶えた……)
(ウリエル神が主と認めるのは、グノス王族のみだが、そのような者は存在しない……)
(やはり、カヘラ砂漠に兵を派遣し、死を司るウリエル神の像を探させるべきか……)
「バルド将軍っ‼」
「なんだっ‼」
「カシャール地方から報告です。」
バルドの元に、カシャール地方から馬を走らせてきた部下が、息を切らして跪いた。
「バルド将軍、申し訳ありません。我々が着いた時には、既にカルヴァン家の領地から火の手が上がっておりました。」
「何だとっ‼」
バルドは、目をカッと見開き、怒りを沸々とたぎらせた。
カルヴァン家とは、代々優秀な科学者を輩出し、最先端の開発を手掛けるグノス王国きっての公爵家である。
「最先端の武器の製造方法の手がかりはっ‼」
バルドの一喝に、部下は恐れおののきながら、ひたすら頭を垂れた。
「それが……カルヴァン家の屋敷から研究施設まで全て爆破され、研究資料は何も残っておりません。」
「研究者どもは捕らえたのかっ⁉」
「カルヴァン家当主と思われる遺体は発見されました。屋敷もろとも自爆したようです。他の研究者及びカルヴァン家の子息は行方不明です。」
「さっさと子息を探し出せっ‼何としても、最新の武器の製造方法を手に入れろっ‼」
「御意っ‼」
「おのれっ‼小癪な研究者どもがっ‼」
バルドは、怒りまかせに石壁を蹴りつけた。
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