第三章 ユーノア神殿

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「アザン、本当にユーノア神殿に入れるのか?」 ファラトが不安そうにアザンを見上げると、アザンはくしゃりとファラトの頭を撫でた。 「俺は、シエロ地区へオース神殿の護衛長だからな。どこの国の神殿でも入れる。」 翌朝、二人はセラピア王国直属の神殿、ユーノア神殿に来ていた。 入口の門を護る兵に、アザンは胸元から取り出した紋章を見せる。 「へオース神殿の護衛長、アザンだ。火急の要件で参った。セイレーン様に取り次いでくれ。」 「かしこまりました。」 兵は、アザンの紋章を認めると、頭を深々と下げて門を開けた。 (んん……甘い……けど、清らかな香りがする……) ファラトは、濃厚な香りに一瞬めまいがした。 アザンと門の中に一歩踏み出すと、神殿へ続く道の両側には、真っ白な花が咲き乱れていた。 「この花は、リリーという。このユーノア神殿を象徴する花だ。」 花に目を奪われているファラトに気がついたアザンは、そっとささやいた。
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