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轟音。
リズムの瞬間もあって、深く迷い込んでしまうような、混沌とした乾いた打音の重なりであって。
信号の規則的な色の表示から生まれる、規則的な停止とノイズ。一定の範囲で生じる一定の音。
長年変わらないだろう増幅された打音。
スクランブル交差点で、ふと止まって、
耳を澄ますと聞こえる音。
もう小走りぐらいしないと、仕事に間に合わないのに、と心の中で思いながらも、いつも、ポップスやクラシックを聴く様に音に聴き入りつつも、その自分をも重ねている。
海未はそう思った。
渡らなきゃ。
我に戻る。今度は自分の声だけが聞こえて、歩みを進める。歩行者信号の青いランプは点滅している。隣の人、向かいの人は急いでいて、カーディガンに擦れたり、風に仄かに揺れる、真っ直ぐ過ぎる髪に当たりそうになりながら、歩みを一歩でも進めようとしている。
赤になっても、車は淡々と進む。容赦なく海未に向かってきて減速しない。
(ぶつかる)「アッ」
そう気付いた時にはもう遅い。
どこの記憶かは定かではないが、またやってしまった。とも思い、思わず心の中で呟いた。
ぶつかる瞬間と思ったところで目が覚めた。
毎日の出勤風景でもあり、夢であり。
最近こうやって現実が揺らいでいる。
起きた瞬間は頭の奥に岩が居座っているように重く、やや睡眠状態。
夢の輪郭は強い。体感していた呼吸感が蜘蛛の糸の様にやや白みを帯びて、空間を覆っている感じ。
実感としては視覚的な現実感が強い。
目の前には天井があるという。
鼓動は荒く、原チャリのアイドリング音さながらだ。呼吸はゆっくりで、穏やかな湖の様に静かで眠い。もう一度、布団に戻って、僅かな時間眠りにつく。すぐさま、夢の境界を通過して戻る事が出来た。
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