火取蛾

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もうずっと 森の中を彷徨(さまよ)っている。 何枚も重なった葉が屋根になって いま、空がどんなかはわからない。 けれど、夜なのだろう。 時おり吹く風が、夜の湿り気を運んでくる。 闇に生きるものたちの声を、四方から響かせる。 『どこに行く? 何をしに行く?』 わからないの。何も見えない。 暗闇ばかりのせいじゃない。 『いまは新月。空に道すじがない代わりに、今夜はほら……きっと出るよ、あの家が』 それはだれの? 『孤独な者の辿り着く家』
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