豆乳

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「喉渇きましたよね。」 背中に手を入れ 上半身を起こすと ペットボトルに口をつけさせ 飲ます。 震える唇から水が零れた。 タオルで拭いて もう一度飲ませる。 コクンと喉が動き ほっと息を吐き出すのを確認し 蓋を閉めて サイドテーブルに置くと するすると腕が伸びてきて首に巻きつき 引き寄せられ 覆い被さった。 初めて見る表情。 潤んだ瞳が じっと俺を見つめる。 「春・・して。・・男も・・たまにはいいだろ。 目瞑ってたら・・女と変わらない・し・。」 自棄になったかのように自分を下げ 佑さんはそう懇願した。 自分で自分を傷つけている。 自分の言葉に傷ついている。 そんな辛そうに。。 布団を剥ぎ 身体を潜り込ませて ぎゅっと抱きしめ 背中をトントンと叩いた。 「どうしたんですか。なんで自分をそんな風に 扱おうとするんです。それに襲わないって 佑さんが言ったんじゃなかったでしたっけ。」 ふざけたように言って顔を覗き込むと 涙がポロッと一粒零れ落ちる。 「いい・・んだよ。。もう。。 気持ちも・・何も・・関係ない・・。 春も。。溜まってるだ・ろ。。だから。。」 「佑さん。」 低い声音に ビクッと佑さんは身を強張らせた。 怖がってる。 きっと。怖かったんだな。。 冷静に。 冷静になれ。 グッと一旦息を呑み 吐き出した。 「どうせなら もっと元気な時に迫って下さいよ。 熱出して おでこにタオル当ててるなんて ムードもへったくれもないです。」 敢えて揶揄う声音でそう言いながら 落ちたタオルを拾い 額に乗せる。 「・・む・・ムードって・・。」 佑さんは無理矢理 口元を歪めた。 くすっと笑い 柔らかく抱きしめると 強張った身体から ゆっくり力が抜けていく。 「・・春。。」 こんなに哀しい響きで名前を呼ばれる。 胸が締めつけられ 苦しい。 後頭部にそっと手を回し 引き寄せた。 俺の胸に顔を埋め 静かに泣き出した佑さんの 髪に唇をつけ 背中をさする。 「寝てください。話はまた明日。 熱ありますから ゆっくり休んで。 こうやっていますから もう心配いりません。」 佑さんは小さく頷いて ぎゅっと俺にしがみつく。 しばらく続いた嗚咽が途絶え 身体の重みが 胸に乗ると 佑さんは寝息を立て始め 乱れた前髪をそっと掻き上げると 眉間に小さく皺を入れた。
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