豆乳

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朝になっても熱は下がらない。 それでも仕事に行こうとするのを止める。 「無理です。余計悪くなります。 臨時休業の張り紙貼ってきますから 佑さんは心配せずに寝ててください。 早く治さないと何日も店を閉める事になりますよ。」 脅すように そう言うと 熱で真っ赤になった顔を しかめ 仕方なさそうに頷いた。 「明日はちょうど定休日ですし 今の内にしっかり回復しましょう。 何か食べれそうな物、ついでに買ってきますね。 水はここにありますから。」 立ち上がろうとすると そっと手を握られる。 大丈夫。と手の甲を叩くと 「春。。ごめんな。。昨日。。あ。。あんな事。。」 すまなそうに眉を下げ 視線を逸らした。 何をしたかは 覚えてるんだな。 「気にしないで下さい。ただ どうせなら もっと。。」 「ムードとかって言うなよ。。」 顔を更に赤らめて遮り ちろっと睨まれる。 笑いながら ポンと頭に手を乗せた。 「行ってきます。」 立ち上がり 部屋を出ようと歩き出し 襖の前で振り返ると 心細げに俺を見ている。 ちゃんと守りたかった。 あの時。 行かせないと 止められる自分であれば。。 一体 今まで何をしていた。 何のためにここにいる事にした。 自分が許せない。 グッと拳を握る。 ぐるぐる捲き上る感情を押し殺し 顔には出さず 笑みを作り 手を振ると 佑さんも力無く ひらっと手を振った。 そばにいて。 そう聴こえてくる。 急いで戻ってこよう。 足早に家を後にした。
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