豆乳

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「尚之だ。矢島尚之。同級でな。 佑と一、二を争うくらい頭がいい奴で 俺たちとは高校から離れたが 二人は同じ高校で。 その頃どうも。。あの。。なんだ。」 どう説明しようかと言葉を選ぶ修さんへ頷くと ああ。知ってるのか。と驚いた。 「最初 住み込みの話を頂いた時に その辺りは 話してくれたんで。プライベートを晒すからと。 カミングアウトはしていないと言ってましたが。 その人が佑さんの付き合っている人なんですね。」 うん。と煙を吐き出し ゆらゆらと立ち上る様へと 目を向ける。 「俺はたまたま見かけてな。まあ。だからって 何だとかは思わなかった。佑は佑だし。」 俺が頷くと でもな。と灰をぽんと灰皿に落とした。 「ただ この街は狭い村社会で。 よく思わない奴はいるだろうな。 今回の噂話みたいによ。あっという間に広がって 無闇に人を傷つける。内緒にしてて当然だ。 尚之は今は街を離れたし 行動にも気をつけてるんだろうな。 噂が立つ事も無い。まあ。昔から一緒にいるから 疑う奴もいないだろうしよ。ただ。。」 修さんは言い澱み 煙草をもう一吸いすると 煙を吐きながら 乱暴に灰皿に押しつけた。 「官僚になってからの尚之はどんどん 冷酷さを増していってな。 昔の知り合いの相談に乗るフリをして 底辺まで突き落とす。自分の利益の為なら 人間関係など不要。そんな男に成り下がった。 元から街にも人にも愛着なんか無い。 佑には何度か手を切るように言った事がある。 ただまあ。アイツはずっと一人で。。。 その関係に固執したんだろう。そういった事には 不器用だし 自分を軽んじて人の事ばかりに 一生懸命って損な性格もあって 手元にあったのは尚之だけだったんじゃねえかな。」 はあ。。とため息をつきながら麦茶に口をつけた。 「ただ。ここ数年上手くいってなかったみたいで。 佑もずっと元気が無くてよ。 何度か無理矢理 話を聞き出した所 体の関係だけが続いているらしい。 そんなの一番向いてねえヤツだからな。 悩んでるのは見てとれた。 だけど この間二人で 飲んだ時に アイツ もう止めるって言ってたんだ。 現実に目を背けて 見て見ぬ振りして 自分をこれ以上嫌いになりたくないって。 結構 晴れ晴れとした顔しててさ。 俺もその方がいいって言ってよ。 多分 別れ話をしたんだろう。それが。。」 あんな事に。 ブルブルと怒りで手が震えてくる。 好き合っているなら。 佑さんが幸せなら。 この感情には蓋が出来る。 だが絶対に違う。 俺なら。 絶対にあんな目には遭わさない。
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