ティー・ロワイヤル

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「好きだったよ。ずっと。」 好きだった。 尚之がずっと好きだった。 「お前に受け入れて貰ったと思って 本当に幸せだった。」 連絡が来ればワクワクして。 会えた時は嬉しくて。 抱いて貰えたら幸せだった。 でも。。。 ぎゅっと両手を握る。 「お前が俺の事なんとも思ってないのは わかってたよ。それでも一緒に居る時は 優しかったし。それだけで俺は良かったんだ。 だけど何時からかお前は俺を一切見なくなった。 ただ身体を重ねる目的だけで呼び出されて。 何で一緒に居るんだろうって。 どんどんそう思う様になって。。。 一緒に居る時間が辛くなった。 道具のように扱われてる。そう思う様になってから 自分自身の気持ちにも自信が持てなくなった。 一人になるのは怖かったけど それ以上に自分に嘘をつくのはもう嫌だった。 だから・・・・・。」 思い出し グッと胸が苦しくなる。 辛い決断だった。 自分の時間のほとんどを尚之に捧げて。 それでも自分でそれを捨てた。。。 尚之は黙ったまま俺を見つめ 煙草を消すと そっと腕を伸ばし 頬を触ろうと手を近づける。 ビクッと体が勝手に拒否反応を起こした。 手が止まり 尚之は寂しそうにふっと笑う。 すっと腕を引き 手を引っ込めた。 慣れ親しんだ その手さえ もう 自分は受け入れられなくなってる。 「・・そうか。」 そう言って遠くへとまた目をやった。 「俺は何を見てたんだろうな。。」 俺の言葉を受け 尚之はぽつりとそう口にし ポケットからUSBを取り出す。 ほら。と俺の手に握らせた。
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