ティー・ロワイヤル

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「不満だらけだったよ。何もかもな。 だから意地になってた。 いくら成績上げようが 一番の大学に入ろうが 褒められた事も無い。当たり前。 まだ道の途中で じゃあどれだけ偉い奴になれば あの女は俺を認めるんだって。。 自分が自慢出来ればいいのか。 俺はその為にやりたくも無い事を延々と やり続けてるのか。。 不満しかなかった。 お前を呼び出して 自分の好きにして 俺だけに向ける愛情を貪る。 それだけが自分を保っていられる手段だったのかも しれない。だからお前が道具と思っても仕方ない。 それなりのことをしてきたからな。。」 悪かったな。と尚之は頭を下げた。 ちょっと待って。。 「ご・・ごめん。。俺。全然知らなかった。。」 尚之は被りを振る。 「俺自身がわかってなかったんだから 佑がわかる訳無いだろう。 お前は何も悪くない。言っただろ。 感謝してる。これ以上間違いを犯さずに済んで。 好きでもない女と結婚して 出世だけの為に 更に 人手なしになる所を お前に止めて貰ったんだからな。 だから あの女があんな状態になっているからって お前が気に病む必要は無い。自分の撒いた種だ。」 振り返り笑顔を見せる。 それは俺がずっと好きだった尚之だった。 「来週。アメリカに行くんだ。 MBAを取りにな。もう一度やり直す事にした。」 「・・アメリカ。。」 海外を飛び回るような仕事がしたい。 昔 そう言ってたのを思い出す。 「一緒に行かないかって言おうと思ってたんだが こっちは手遅れだったみたいだな。」 尚之は寂しそうに笑い 歩き出す。 「な・・尚之!」 振り返り 手をひらひらと振った。 「佑。あの犬コロに言っとけ。 手離したら俺が貰うってな。」 そう言ってニヤッと笑う。 「今度こそ ちゃんと愛してもらえ。いいな。」 尚之は踵を返し そのまま去っていった。
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