ティー・ロワイヤル

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何も知らなかった。 自分ばかりが傷ついて辛い思いをしてるって ずっとそう思い込んでて。 尚之がそんな風に悩んでたなんて これっぽっちも思った事もなくて。 何も話してこなかった。 何も聞こうともしてやらなかった。 もっと早く。 こうやって話してたら・・・。 俺たちはもしかして。。。 それでも。 もう時間は戻らない。 悔やんでも もう戻る事は出来ない。 尚之は前を向き 俺の好きだった尚之に戻り また先へと歩いていく。 俺はそれについていく事は出来ない。 選んだ道が違ってしまったから。 もう戻る事はない。 はあ。。と深くため息をつき空を見上げる。 綺麗な星空が広がっていた。 ぽろっと涙が勝手に零れるのを感じる。 なんで泣いてんだろ。 理由はわからない。 でも。 あの頃の自分に。 あの頃の尚之に。 さようなら。 もう振り返るのはこれで最後。 俺も。 もう前を向いて歩いて行くから。 さようなら。 佑は手の甲で涙を拭い ベンチの背もたれに 背中を預けると 濡れた視界そのままに キラキラと輝く星空を見上げる。 足音がゆっくりと近づいてきた。
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