ティー・ロワイヤル

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ぎゅっとまた手を握り 横に並んで歩く 大きな男をそっと見上げた。 長い髪を後ろで縛り 鋭い切れ長の瞳が まっすぐ前を向いている。 俺はこの先もこうやってコイツを見上げていくんだ。 例え何があっても。 一緒にずっと居られなくなっても。 この手だけは。 一生離さない。 誰かを傷つけても。 誰かに恨まれても。 例え 殺されかけても。 もう。迷わない。 「佑。流石に腹減ったんじゃない。」 春はいつもの声音でそう言って顔を覗き込んだ。 ああ。そういえば。。 「うん。。なんか久しぶりに腹減ってきたかも。」 言ったそばから ぐぅーっと腹の虫が鳴る。 顔が赤くなったのがわかった。 春はくすっと笑い 手をブンブンと振りながら 「待ってる間に飯作っておいたから 帰ったら一緒に食べよう。 最近料理だいぶ上手くなった気がする。」 自信ありげにそう言ってニヤッと笑った。 嬉しい。 人に食べさせるのが好きだったけど 春が作る物を食べるのはもっと嬉しいって気づいた。 「ありがと。。ああ。。それとアレ。飲みたい。」 「アレ?」 なんだろうと首を傾げる。 「ティー・ロワイヤル。ブランデー多めで。」 冷めきった俺を温めてくれたあの飲み物を。 心に小さく空いた穴をきっと埋めてくれる。 春が作るあのティー・ロワイヤルを。 握った手を精一杯 強く握る。 「二人で飲みたい。縁側で。」 ホッとするあの場所で。 大好きな人と一緒に。。。。 春はじっと俺を見つめ ぎゅっと手を強く握り返すと うん。わかった。と微笑んだ。
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