ローストビーフ

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その大きな手の温かみが いいよ。と 言っている気がした。 顔を上げると ニコニコと微笑まれ 我儘を言う 子供によしよしとするように 頭をクシャクシャとかき混ぜられる。 涙が止まらない。 いいのかな。 本当に。 いいのかな。。 頭の中で二人の自分が言い争いをしている。 こんな勝手な事。。 迷わないって決めたのに。 欲しいものを欲しいと言うのは こんなにも辛い事なんだ。。。 苦しむ俺を止めるかのように 狭川さんは 俺の手を握り もう一度 力強く頷いた。 いい・・んだ。 「あ・・ありがとう・ございます。。 すいません・・本当に・すいません。。」 佑はそのまま ベッドに伏せ 泣き崩れる。 佑の背中を摩りながら狭川が視線を向けると 春は病室のドアの前で立ち尽くし 背後から 堺と京本が神妙な面持ちで その光景を見つめていた。
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