ローストビーフ

6/32
前へ
/540ページ
次へ
「はい。着きました。」 佑をベッドに横たわらせると ニコッと笑みを浮かべ んー。と両手を広げる。 春はくすっと笑い はいはい。と覆いかぶさって 抱きしめると 腕の中で柔らかく力を抜いた。 久しぶりに飲んだからか 佑は少し酔っ払っている。 すりすりと顔を胸に擦りつけ ニッと笑った。 もう。。可愛いすぎるんだけど。 ああ。でも 目の周りが少し腫れている。 いっぱい泣いたからな。。。 指腹でそっとなぞり 唇を近づけ 閉じた瞼にチュッとキスを落とした。 病室に戻ると 佑と意識が戻った親父が 話をしていて。 涙を零す姿に どれほど傷ついていたのか。 苦しんでいるのかを再認識した。 わかっていたつもりだったのに。 佑はずっと俺と親父との関係性に心痛めている。 だからこそ 離れないといけないんじゃないかと 悩んでいる事も。 その理由がわからないのに 俺に問いただす事もなく 一人で不安を抱えて。 わかっていたつもりだった。 それは大丈夫だと言い続ける事で 解消出来ると思っていた。 でも そうじゃなかったのに。 自分の傲慢さに嫌気が差す。 正直に自分の想いを吐露し 涙する姿に 自分は何をやっているんだろうと 初めてこれまでの自分を後悔して。。 泣き崩れた佑の横に立ち 「もう少し。ちゃんとたどり着くまで 頑張らせて欲しい。今まで きちんと向き合わずに きた事は謝る。・・すいませんでした。」 親父に向かって そう言って 初めて頭を下げた。 未だに蟠りはある。 だが 佑と時間を過ごすうちに 勝手な思い込みや わかっていない事があるかもしれないと 思うようになったのも事実だ。 だからこそ。 俺はたどり着かなきゃならない。 もう少し。 もう少しできっと。。
/540ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3113人が本棚に入れています
本棚に追加