ローストビーフ

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「ええ。コイツらが 交代で事にあたらせて 頂いております。未熟者ばかりで 簡単に騙されて 配置を外れるなど あってはならねえ事だ。 全く。お怪我はいかがでしょうか・・あの・。」 「ありがとうございます!」 被せるように 佑は頭をまた深々と下げた。 神宮寺も他の奴らも 目をパチパチと瞬いている。 「あの・・?」 佑は 一歩前に出ると また頭を下げた。 「護衛して貰ってるって 春や京本さんから 聞いてたんですけど 全然何処にいるのか 俺。わからなくて。。一度きちんと 御礼が言いたかったんです。良かった。。 こんなに大勢の方にご迷惑おかけしてるんですね。 皆さん。いつもありがとうございます。 おかげで 商店街は平和が保たれてます。 あ。・・あれ。何度かうちで惣菜買われてますよね。 あれ? ああ。あの人とあの人も。 なんだ。わかってたらもっとちゃんと。。」 そう言って ちらっと俺に視線をやり 「春。そういうのは言えよ。お代貰っちゃって。。 わかってたらさ もっと色々食べて貰ったり。。」 と不満げに小声でそう言って俺の脇腹を突く。 顔を指された奴らは 驚き 我慢出来ずに口を開いた。 「俺 一回しか行ってねーし 春兄としか やり取りしてねーぞ。佑さん奥に居たし。。」 「俺だって。翔がワイワイやってんのに 紛れて何回かちょっと買っただけだよ。 覚えててくれたんだ。すげえ。。」 あからさまに周りの奴等が羨ましそうな顔をする。 俺も行けば良かったと呟く奴まで出る始末。 まあな。 佑は一度来た客でさえ 顔をしっかり覚えている。 また来てくれたから多目にな。と 指示を受ける事も一度や二度じゃない。 「知らない土地で 本当ならやる必要も無い事に 手を煩わせて すいませんでした。 ありがとうございます。皆さんのおかげです。」 佑がそう言って ニコッと笑みを浮かべると 全員がほわんと顔を紅潮させ 恥ずかしそうにモジモジしながらペコペコ 頭を下げた。 神宮寺は 成る程。と小さく呟くと 「やはり 坊が見染めただけの事はありますね。」 とニヤリ笑う。 ボッと火がついたように 佑は顔を赤らめた。 良かったと思う反面 佑の可愛さがコイツらにバレ 内心 面白くない。 京本は目敏く俺が不機嫌になったのに気づき くすっと笑うと 「ほら。客人をいつまで玄関に 留まらせるつもりだ。」 全員を立ち上がらせ 佑へと視線を向ける。 「さあ。佑くん。どうぞ中に。」と促した。
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