ローストビーフ

14/32
前へ
/540ページ
次へ
一進一退の攻防が繰り広げられていた。 久しぶりだろうに 佑は臆する事無く 打ち込んでいく。 横井はかなりの手練れで 手を抜いてやって いるのかと思ったが 周りの舎弟連中の 真剣な表情を見ると そうでもないらしい。 春は じっと佑の動きを見つめた。 防具に包まれていても あの弾力のある筋肉が 躍動し その姿 動きが輝いて見える。 本当に好きなんだな。 ガキの頃 棒切れ持って走り回って。 「チビ太も剣道やれよ。俺と戦おうぜ。」って 言ってたの 覚えてないだろうけど。。 結局 剣道はやらなかった。 佑には道場が無いと言ったけど 実際は そうではなくて より実戦に近い武道を選んだ。 必然として。 選ばざるおえなかった。 でも。 やっぱりやっておけば良かったな。 そうすれば 一緒に出来たのに。 試合は膠着状態が続く。 本当の試合では無いからか どちらかが 一本取るまで終わらない。 その時 横井が面を鋭く放り込んだ。 その竹刀を打ち落とし 佑はそのまま 踏み込んで 面を打つ。 綺麗な音が道場に鳴り響き 神宮寺は バッと旗を上げた。 「一本。」 わあっと周りから歓声が上がる。 「面打ち落とし面だ!」 「正二兄貴が得意だった技。。」 「信じられねえ。。また見られるなんて。。」 舎弟連中が騒ぎ始める中 二人は礼をし 下がって 正座し 防具を外す。 面を外した佑は白い肌を紅潮させ その大きな瞳から すーっと涙が溢れた。
/540ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3113人が本棚に入れています
本棚に追加