ローストビーフ

15/32
前へ
/540ページ
次へ
ギョッと見ていた連中が驚く中 急いで 佑のもとに駆けつける。 「佑。大丈夫? 何処か怪我・・。」 佑は泣きながら笑みを浮かべ 被りを振った。 手の甲で涙を必死に拭き うるうると濡れた瞳が 真っ直ぐに俺を見る。 「違う。。俺。思い出したよ。 ガキの頃。顔は面でわかんねえんだけど あれは 確かに親父だった。竹刀持って 俺がいくら 打ち込んでもさ。簡単に払われて。 悔しくて悔しくて。泣きながら向かってって。。 最後に先っぽだけ 頭掠めたら おお!凄いなって 俺の頭をポンポンって。。」 そう言って 涙をぼとぼと落とすと 佑は 心配そうに見ている連中と横井に視線を向け 「俺。。今まで 親父の事 何も覚えてなくて。。 でも。。なんか今 初めて親父を思い出しました。 皆さんのおかげです。。ありがとうございます。 横井さん。本当に。。ありがとうございました。」 床に擦り付けるほど頭を下げる。 一瞬の静寂が道場を包むと 何処からともなく すすり泣く音が始まり 舎弟連中は おいおいと全員泣き出す。 横井はグッと唇を噛むと 一筋 涙を落とし 天を仰いだ。
/540ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3113人が本棚に入れています
本棚に追加