豆乳

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とぼとぼと佑は足を引きずるように 店へと向かっていた。 祭りの会合で 斎藤さんが手を挙げた。 「悪いんだけど。。佑ちゃん。今回は 不参加にしてくれないかな。」と言われて。 何人かの人も気まずそうに俯きながら それでも そうして欲しいと思ってるようだった。 木村さんが 血相変えて 立ち上がり 山田さんが必死に宥めて ひとまず 場は収まったけど 斎藤さんは顔を真っ赤にして まだ言い続けて。 「祭りに変な奴らが来て 問題起こされて 悪い評判が立ったら それこそ風評被害だし。。 今年は25年に一度の御開帳もある大事な祭りだ。 そんな時に騒ぎが起こったら 俺たちも困るんだよ。。」 商店街から少し行った所にある裏山に小さな寺 があり そこの観音様を御開帳するのは25年に一度。 その年の祭りはそれに合わせて神輿も出て 大掛かりなものになる。 「だから なんでそれが佑のせいなんだ。」 だって。。 斎藤さんは周りの人と目配せして 木村さんは本気で怒っちゃって。。 「お前。まだそんな事言ってんのか!」 取っ組み合いが始まりかけた。 俺のせいで。。 こんなの嫌だ。。 急いで大声で割って入る。 「木村さん。もういいよ。斎藤さん。わかりました。 今回はうちは不参加で。じゃあ。俺はこれで。。」 立ち上がり 座敷を出ようとすると 山田さんに止められる。 「佑ちゃん。ダメだよ。何も悪い事 してないんだから こんな話に乗ったらダメ。」 木村さんも頷いてくれて。 でも。。 その時 低い通る声音が座敷に響き渡った。 「根拠のない話で風評被害を出しているのは 佑くんじゃなくて あなたなんじゃないですかね。 斎藤さん。うちに来る近所の人たちも そんな噂話をしていて 誰に聞いたか尋ねると パン屋さんだって言っていましたが。」 京本さんは 吸っていた煙草を灰皿に押しつけ ニッコリと不敵に斎藤さんに微笑みかけた。
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