豆乳

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春は傘を差し 家の周囲を歩き回っていた。 帰ると言っていた佑さんが帰って来ない。 佑さんは約束は必ず守る。 きっとあの人に会っているんだろうな。 蔑むような瞳に激しい嫉妬心が垣間見え どういう関係なのか わかった気がした。 それに大和さんから聞いた話。 崇さんと喧嘩していたのはあの人の事かも。。 ずっと何処か寂しげで。 苦しんでいるように見えていた理由。 それがあの人なら。 嫌な予感がして じっとしていられない。 雨がざあざあと降ってきた。 駅まで歩き もう電車も無いかと来た道を戻る。 店にも居ない。 仕方なく また家への道を戻ると スポーツカーが家の前に止まっていて 助手席から佑さんが降りてきた。 いや。 荷物が降ろされるように 突き飛ばされたように見えた。 そのまま車は走り去り 佑さんはずぶ濡れで コンクリートにしゃがみ込む。 「佑さん!」 急いで駆け寄ると 頬が真っ赤に腫れ 着衣に乱れがある状態で ガクガクと身体を震わせていた。
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