0人が本棚に入れています
本棚に追加
1-序章
ここは東京から直線距離で100kmほど離れた某県である。
俗に“村社会”と言う言葉があるが、ここはそれを県に拡大したようなところで脳みそが保守主義で凝り固まった者ばかりが生息している様な地域である。
人は大人になって社会に出たら、いずれ結婚をして家庭を作り子供を産み育てる。ローンで家を買い週末はドライブや日帰り温泉でも行って家族と過ごす。好きな車を買って車いじりでもしていれば満足で、たまに親しい仲間たちと飲み会でもやっていれば御機嫌だ。
夢や希望、志、目的、使命、等々そんなキーワードには、「何だそりゃ、和菓子屋の新商品の名前か?」などと言われかねない。日本で一番のド田舎であるにも拘らず、それを認識できていない。他県で「どちらから来られたんですか?」と尋ねられ「○○県です」と答えると「え~知らな~い、中国のどこかですか? 日本語お上手ですね」などと真面目な顔で言われることもあり、知名度ワーストワンである。
更に言えば、一世帯当たりもしくは一人当たりの年間所得も全国でダントツのワーストワンである。そんな有り様だから、世間では“日本の秘境”と言われているそうである。
昭和51年、日本の秘境と言われるこの県のとある町に一人の男が生まれた。
それから数十年経つが、この男は女性に縁が無く未だに独身。頭も悪く、やっと三流大学を卒業して地元の下水処理場で嘱託職員として水質検査の手伝いの仕事をしている作業員である。頭も見た目も全く冴えないこの男、
名前を『高草木 辰也(たかくさき たつや)』と言う.
下水処理場と言っても、この県は下水道の整備はかなり遅れていて、殆どの家屋が合併浄化槽であるため下水処理場の仕事はけっこう暇なのである。辰也が職場で仲間たちと世間話をしていて、
「俺が卒業したのは三流大学だしなぁ~」と言うと
「嘘つけ~、お前が卒業したのは九流大学じゃねえのかぁ~?」と皆にからかわれる有り様だ。
どこかの番組に[ボーと生きてんじゃねぇぞ~~!]と叱られそうである。
因みに、辰也が卒業したのは某県某所に在るとか無いとか噂される謎の大学『九頭龍大学』である。
最初のコメントを投稿しよう!