死後検定

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“あなたが死をどのように受け止めるかの検定” 男は気づけば、真っ白な空間で机に向かい座っていた。机の上の紙には、死後検定と書かれている。 「どういう意味だ?」 男はわからぬまま、紙に手を伸ばした。すると、裏面にいくつかの問いがあった。いつの間にか鉛筆と消しゴムが机の上に現れていた。 「問1・・・・」 “これは、ある1人の青年の話です。彼は幼い頃から少々乱暴な性格でした。友達を一方的に殴ったり、怒鳴ったり・・・問題ばかり起こしていました。そんな彼には1人だけ優しく接してくれる人がいました。近くに住んでいた7つほど年上のお姉さんがいたのです。彼はそのお姉さんには何でも話しました。家庭の話、学校の話・・・・。やがて彼は高校へ通うになりました。お姉さんはとても喜んでくれました。しかし、その数日後、お姉さんは遠くへ引っ越すことになりました。仕事の都合でした。彼はとても悲しみました。彼に優しくしてくれる人はもう、近くにいないのです。彼の高校生活は途端に荒れ始めました。” 「彼が高校で荒れてしまったのはどのような心境からか、答えなさい・・・・・。まるで国語のテストだな・・・。」 男は答えを書き始めた。 [優しくしてくれたお姉さんがいなくなった悲しさと不安感から] 不思議なことに答えがすらすらと浮かんできた。問題文の続きを読む。 “彼が高校3年生に上がった年、とある教師に出会いました。その教師はまだ若い男の人でした。とても熱意のあるその教師は全力で彼にぶつかりました。そして、彼は少しずつ教師に心を開いていきました。人間関係や進路のことなどなんでも相談に乗ってくれました。遅くまで一緒に勉強を見てくれたこともありました。彼は少し遠くにある大学になんとか合格しました。卒業式の日、教師は彼の旅立ちを誰よりも喜び、見送ってくれました。彼は心を入れ替え、大学では真面目に勉強しました。” 「問2、彼が大学で心を入れ替え、真面目に 勉強に励んだ理由を簡潔に述べよ。」 [教師への恩を返したかったから] またしてもすらすらと答えが書ける。男は暖かさが胸の辺りに広がるのを感じた。 “大学を出ると、彼は弁護士になるために試験勉強をしました。独り暮らしなので、アルバイトもしながら、一生懸命勉強し、2回目の試験で合格できたのでした。弁護士となった彼は、困ってる人々のために働きました。人々から信頼される弁護士になった彼の元に1通の手紙が届きました。なんと、あの優しいお姉さんからでした。手紙には久しぶりに会って話がしたいとありました。彼は急いで返事を書き、2人は再会を果たしました。お姉さんは依然と変わらず、とても優しい顔で彼の話を聞いてくれました。彼は高校でのこと、恩師と出会ったこと、弁護士としての仕事などたくさん話しました。彼の話が終わると、今度はお姉さんが話始めました。お姉さんが引っ越しをしてからのことです。彼は熱心にその話を聞きました。お姉さんの話が終わると彼の目からは涙が溢れました。” 「問3、お姉さんの話を聞いた彼が涙を流していたのはなぜか、想像して答えよ・・・・・。」 男は鉛筆を握る手に力をが入るのを感じた。悲しかったのは、お姉さんが結婚していたことではない。子供がいることでもない。その子供が事故で亡くなっていたことでもない。事故で子供を亡くした[お姉さんが、責任を押し付けられて、夫から暴力を奮われていたから]だ。 “彼はお姉さんに名刺を渡し、依頼をするように促しました。しかし、お姉さんは受け取らず、首を横に降りました。私の責任だからと、そう言って、お姉さんは立ち上がりました。彼はその背中を追いかけることができませんでした。それから1週間ほど経ってからのことです。彼の事務所に電話がかかってきました。彼が電話に出ると、お姉さんからでした。1週間前とは違う低い声に彼は何かあったのかと尋ねました。一言、殺されると告げ、お姉さんは電話を切ってしまいました。彼は急いで、手紙にあった住所へと向かいました。無我夢中でお姉さんの家に着いた彼は、中に入ろうと扉へ手をかけました。扉は開いていました。意を決して中へ飛び込むと、お姉さんの名を叫びました。リビングの方から僅かに音が聞こえます。慌ててリビングへ入ると、そこには、片腕を押さえているお姉さんと、包丁を握る男が立っていました。お姉さんに駆け寄ろうとすると、男は横から包丁を振り回してきました。彼はそれを避けようと男の腕を掴みます。男の腕を払いのけ、彼はお姉さんを庇うようにしゃがみこみました。なんとかその場を切り抜けられないかと、彼がお姉さんを立ち上がらせた時でした。背中の辺りが急に熱くなったのです。お姉さんの悲鳴が聞こえます。倒れ混む時に男が逃げていくのが見えました。最後に一言、大丈夫、と笑って、彼は意識を失いました。お姉さんは救急車を呼びました。しかし、病院にたどり着く前に、彼の心臓は動くことを止めてしまいました。それから、すぐのことです。お姉さんの夫は逮捕され、お姉さんが証言台へ立ったのは。今、お姉さんは1人で静かに、平和に暮らしています。” 最後の問題は2択になっていた。 「最終問題・・・・あなたは自分の死を、受け入れられますか?」 男は溢れる涙を左手で押さえながら、右手に握られた鉛筆で答えた。 [はい]
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