第零話 黒幕

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第零話 黒幕

 もう十五年も前になる。  その日、日本は壊滅的な被害を受けた。水面下で猛威を振るっていた異形の怪物『獣鬼』が突然、首都をはじめ各地方の都市に大量出現したのだ。それらに対する知識も、対抗策も持たない人々は逃げ惑い、そして無惨にも喰われていった。また、それによって死んだ人々も生き返り、獣鬼は急速に数を増やしてく。  しかし、日本での未曾有の生物災害は始まりに過ぎない。日本壊滅の数日後、世界各地でも同様の事象が発生したのだ。  人は喰われ、鬼は数を増し――やがて、地球上の人口は獣鬼に逆転された。 国交が絶たれ、ありとあらゆる技術が失われ、文明が衰え行く中、一つの希望が生まれた。生き残った日本の技術者たちの手によって対獣鬼用機動兵装『鬼穿(きせん)』の改良と量産に成功したのだ。 その試験運用と操縦者の育成を最前線で行っていた民間警備会社『ムサシ』は、各地の警備会社や大手製造会社、それだけでなく警察、自衛隊などをも統合し、国営の大組織と化した。  『鬼穿』の普及により、獣鬼の進行を食い止めた人々は、残された土地で獣鬼の脅威に怯えながら生きていくのであった――
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