第三話 ホームレス老兵

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「ほーむれす?」 「そんなことも知らないのか? まあこのご時世でも、人口に対して建物の方が余ってるからな。珍しいといえばそうか。ホームレスってのは、住む家がなくて野宿している人間のことさ」  平二は苦笑する。平二の言うように、日本中の都市や街が獣鬼に滅ぼされているが、残された田舎町にもスーパーやマンションなど、雨風を凌げる建築物は多く残っていた。たとえ、よそから避難してきた人々を受け入れても、平二のように野宿するようなことはそうそうない。この街のような規模なら尚更だ。  蒼は自分の住んでいる寮と比べ、後ろめたさを感じた。 「で、でも、ここからしばらく歩けばたくさん建物はありますし、平二さん一人が住むスペースぐらい余ってるはずですよ」 「いいんだよ。そういう問題じゃないんだ。これは、家族も仲間も救えず、自分だけが生き残っちまった(いまし)めみたいなもんさ。惨めな俺にピッタリなんだよ」  平二は、自嘲気味に目を細め穏やかに語る。蒼はその独特な雰囲気になにも言えず、目線を落とした。
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