第三話 ホームレス老兵

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「しょうがねぇな。次はバーニアのことも教えてやるよ」  蒼の顔が急に生気を取り戻し、目はキラキラと輝きだした。その場で姿勢を正し、「お願いします!」と頭を下げる。  平二は面倒くさそうにのっそりと上体を起こし、草むらの上にあぐらをかいた。 「……いいか? バーニアを運用する上で重要なのは『残圧』だ。ボタンを離した後の『残りカス』が勝敗を決めると知れ。何度も何度も使い、どれだけ噴射すれば、どれだけガス圧が残り、それでまだどれだけ進めるのかを精密に把握しろ」  蒼は大きく首を縦に振り、慌ててメモを取る。 「これは燃料の節約という目的があった。以前よりも比較的燃料が持つ新世代型ではここまで考えて使っている奴は少ないだろう。だが、自由自在に鬼穿を操るには必須のスキルだ。これが分かっていないと、いつまでも噴射時間の調整で神経をすり減らすことになる。だからその分、鬼穿を使った移動と、武器を用いた攻撃が同時にはできない。鬼穿を手足のように使いこなしたくば、全神経を『残りカス』に集中しろ。いいな?」 「はい!」  希望に満ち溢れた、蒼の明るい返事が綺麗な夕焼け空へ響いた。  蒼の快進撃はここから始まる。
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