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「いいんですか? 高塚講師。彼がまた惨めな思いをしてしまいますが」
山上が口の端を歪め、バカにするように声を高くする。それを聞いた同期たちもクスクスと笑う。最近の山上は増長していた。鬼穿では、誰も自分に敵わないからといって、その実力を過信しているのだ。講師にまで軽口を叩くなど、今までの常識では考えられない。
「無駄口を叩くな。減点するぞ」
高塚がドスの効いた声を発し睨みつける。
山上は特に反省した様子もなく「申し訳ありません」とだけ言って前に出た。
蒼も無心で山上の前に立つ。
「なんだよその目は」
山上が憎々しげに蒼を睨み付ける。蒼にとっては心頭滅却。山上から見れば、余裕綽々に見えたのだろう。だが、蒼にとってはどうでもいい。
蒼は大きく息を吸うと、右足を斜め後ろへ引き、左手を腰に置いて構えた。
「なんだあれ……」
「あんなの教わった覚えはないぞ」
「い、いや……あいつのことだ。どうせ適当だろ」
周囲で同期たちがどよめく。
高塚も険しい表情ではあるが、目を見開いていた。
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