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「なんのつもりだ。バカにしているのか」
山上が奥歯を強く噛み憤怒の形相で蒼を睨み付ける。
しかし、蒼はなにも答えず――
――バシュゥゥゥン!
左腰の背面噴射ボタンを押し、駆け出した。風を切りけたたましい音を響かせながら雷鳴のように一直線に。
「んだよ、結局前と同じか!」
ニヤリと不適な笑みを浮かべ、左籠手の装甲を下へスライドさせる山上。
蒼は、山上の数歩手前で噴射を止め、走行の補助をガスの残圧に切り替えた。左手はまだ腰に添えたままで、右の拳を突き出す。
――バーニアにばかり気をとられてたら他の挙動に集中できないだろ。ボタンを押し終えたら、すぐに思考を切り替えろ。計算通りの挙動をするかなんて不安に思考を割いている余裕はない――
蒼は平二の教えを忠実に守り、右で攻撃に左で緊急回避に集中する。
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