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「あ、ありがとうございます!」
蒼は目をぐるぐると回しながら一歩下がり礼をする。彼女がこんなに嬉しそうなのも初めてだったので内心戸惑っていた。
蒼が目を回している隙に、周囲を同期たちが囲んでいた。
「ねぇ、どうやったらあんな挙動が出来るの? あんなの講義でも教わってないよ」
「お前、実はすげぇ奴だったんだな。笑って悪かったよ」
「今度、俺に鬼穿の捌き方を教えてくれ!」
蒼がかつてない好奇の視線に戸惑っていると、
「ってぇなぁ……」
山上が殴られた頬をさすりなが立ち上がった。
「大丈夫ですか!?」
駆け寄った蒼に山上は目を丸くしたがすぐに目を逸らす。
「けっ、勝者の余裕かよ。けど……今回は俺の完敗だ」
そう言って踵を返した山上は、高塚に戦闘での負傷を訴え保健室へと歩いて行った。その背は、どこか清々しく見えた。
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