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「っ! まさかっ!?」
大山は弾かれたように顔を上げ目を見開く。杖をつきながらも、すぐさまパソコンの前に戻る。フォルダの深層から志郎の研究レポートを見つけ出し印刷した。
コピー機からのっそり出てきたそれをひったくると、ドカッと椅子に深く腰掛け一心不乱に読みだした。やがて、顔が青ざめその手が震えだす。
「……間違いない……『オニノトキシン』の正体は、有害な化学物質でも、未知の寄生虫でもない――」
大山が興奮気味に呟き、レポートをめくる手を早める。
「――となると、儂の脳も既に……」
大山は複雑そうに顔をしかめると頭頂部を撫でた。心臓はバクバクと脈打っている。
(しかし『半人半鬼』になっておいて正解じゃった)
大山の左足は事故で失ったのではない。自ら切り落としたのだ。『半鬼化薬』を注入するために。これも万が一、『オニノトキシン』が既に自分の脳に住み着いていた場合に、『千里鬼眼』で見られないための苦肉の策だ。
『半鬼化薬』は、うまく機能しなくなった人間の体の一部を再生させ、『オニノトキシン』がそこに住み着くというものだ。しかし大山の場合、足の切断に対して再び生えてくるなどという都合の良い結果にはならなかった。一応は、左足を失ったままでも半人半鬼になれたので、成功と言える。
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