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それからの実習では蒼は大活躍だった。
その流れるような鮮やかな鬼穿捌きは、同期だけでなく指導員たちの心すら魅了した。次第に、同期たちは今までのことなどなかったように蒼へ話しかけるようになった。
「いい加減教えてくれよ、蒼くん。そんな技術を独り占めするなんてずるいぞ」
座学の休憩時間、蒼へ詰め寄って来たのは村田だった。眼鏡を光らせ鼻息荒くしながらメモ帳を握りしめている。蒼は悩ましげに唸る。
「そうは言ってもなぁ……結局は籠手を捨てて、バーニアの残りカスに集中しろってだけだし……」
もちろん、それだけでは断じてないが、蒼は人に教えるのが下手くそなのである。この問答を何度も繰り返しているが、一向に話が進まない。
二人が「むむむ」と頭を抱えていると、
「それだけなわけがあるかよ。まあ、あれだけの芸当、俺らに真似できるかどうかがまず怪しいが」
二人の横から割り込んだのは山上だった。その後ろには、蒼が徒手格闘で怪我をさせてしまった同期『大林道夫』の姿もある。大林は、ボウズ頭にがっしりした体つきだが、穏やかな性格で表情はいつも柔らかい。
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