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定時後、蒼はいつも通り平二の元へタバコを持っていく。空を見上げると黄昏が美しく懐かしさすら覚えた。今までは景色などに浸っている余裕はなかったが、成長すると見える景色も変わるのだと気付く。
蒼が夕焼けで輝く川に見惚れ突っ立っていると、橋の下の草むらであぐらをかいていた平二が声をかけた。
「なんだよ、楽しそうだな」
「はい、師匠。師匠から鬼穿の扱い方を教わったおかげで、訓練校で皆から認められるようになりました。本当にありがとうございます」
蒼は心底嬉しそうに語る。誰かから認められるということが、ここまで嬉しいことだと初めて知ったのだ。今までは、周囲から疎まれ嫌悪の視線を向けられてきたからこそ、なおさら蒼の心は満たされていた。
そんな表情を見た平二は「ふっ」と優しげに微笑む。
「やっぱガキってのは笑ってるのが一番だな。それが年相応ってもんだ。さてと……」
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