第四話 かりそめの平和

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 ――――――――――  それは明け方のこと。  まだ日が昇らず薄暗い時間。  住宅街の裏手にある墓地では異変が起こっていた。  雑多に並んだ墓石の下からなにかが生え始めていたのだ。それも一つだけでなくあらゆる場所から。次から次へと勢いよく、地面を突き破る。  色白で生々しく細長い。棒状のそれの先には五本の指。  苦しそうに宙をかいて蠢いている。  それは――死んだはずの『人間の手』だった。
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