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「しかしこれが分かったところで、手の打ちようがないことに変わりはない」
大山は忌々しそうに頬を歪めるとレポートを持つ手に力を込める。
その情報を国家防災局へ送るべく、早速文章を打ち始めた。
――しかし、その手はすぐに止まることになる。背後でした扉を乱暴に開け放つ音と、荒々しい息遣いによって。
「バ、バカな……」
振り向いた大山の目線の先にいたのは、二体の『獣鬼』だった。どちらも看護婦の制服を着てはいるが、だらんと首が垂れ目は白目を向いている。片方は、先ほど昼食を運んできた看護婦だった。とても女性のものとは思えない野獣のような息遣いで、内側から盛り上がった筋肉が服に張りを出している。
完璧なタイミングだった。まるで、大山が真相に辿り着いたことをすぐに察知したかのように。
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