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第三話 ホームレス老兵
蒼は男に今までのことを話した。鬼敬教のことや訓練校でのことなど。男は、真っ赤に焼けた空を見上げ、気のない相槌を打つ。蒼はその隣で川を眺めていた。
「そうかい。そりゃ辛いな」
「はい……ところで、あなたのお名前を聞いてもいいですか? 俺は蒼といいます」
「そうだな……俺は『平二』だ」
その返答には若干の間があった。まるで名前を今考えたかのような。しかし蒼は気にせず、平二と呼ぶことにする。
「平二さんはなぜ、こんなところにいたんですか?」
この河川敷は人通りが少なく、橋の向こうには人が住んでいない。もし獣鬼の襲撃があったとき、一番最初に狙われる。
ちなみに外敵の察知はどのようにしているのか。それは、街にある背の高いマンションのいくつかをムサシが押さえ、三交代で屋上から外の監視をしているのだ。
蒼の問いへ、平二は無造作に答えた。
「ホームレスだからな」
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