第四話 かりそめの平和

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第四話 かりそめの平和

 それはとある平日の午後。空が雲で陰る中、校庭ではムサシ訓練生たちが緊張感に包まれながら作業準備を行っていた。高塚の指示を受け、黙々と鬼穿を身に着けていく。最後の一人『村田太郎』がインカム、籠手、バーニア、ブーツ全ての装着を完了すると、高塚がいつも通りの険しい表情で告げた。 「本日の摸擬戦も以前同様、私が指名する一対一で戦ってもらう」  その日は、二回目の摸擬戦だった。蒼は拳を握りしめ、必要以上に力んでいた。今までの鍛錬の成果を試すには絶好の機会だ。  蒼が緊張に顔を強張らせながら高塚を見ると目が合った。顎に手を当て興味深そうに蒼を見ていた。しかし彼女は、すぐに目を逸らすとなにも言わず全員に下がるよう伝えた。一瞬、彼女の頬が僅かに緩んだように見えたのは気のせいだろう。 「よし、では最初の組み合わせだが――『山上』と『蒼』の両名、前へ出ろ」 「え?」
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