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 あの日、俺がもっと積極的に行動出来ていれば、また違った今があったんだろうか?  十年以上も昔の事はもう変えようがないけれど、この先の未来は変えられる。  今声をかけなければ、いつかこの先のどこかの時点で、あの時ああしておけばもしかして、と思うのだろう。  自信なんてない。だけど後悔もしたくない。二次会へ繰り出そうとしているグループを少し遠巻きに見ている原田に声をかける。 「原田は行くの?」 「ううん、行かない。」  即答のその言葉にホッとした。 「じゃあ、駅まで一緒に帰ろう?」    人通りの多い歩道を並んで歩くと、あの日、花火大会の会場で並んで歩いた記憶が蘇る。笑いながらも心が泣いていた原田。俺ならあんな表情はさせない。 「明日、予定ある?花火大会だろ。一緒に行かない?」  花火大会の記憶は新しく塗り替えればいい。その先に繋がる未来を見たくて、誘いの言葉を投げかけた。 〈end〉
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