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金曜日の居酒屋は満席状態であちらこちらで歓声が上がっていて騒々しい。相乗効果というのか、皆が競い合うように声を張り上げるので、ボリュームもドンドンと大きくなる。
久々の同窓会、出席するか多少の迷いはあったけど、来て良かった。
原田優奈がまだ原田だということを知って、胸の奥の方に閉じ込めてあった瓶の蓋がキュッと音を立てて開いた。
耳は原田の声に敏感に反応していたのかもしれない。隣のテーブルなのに、原田の「彼氏はいない」という声まで拾った。
しっかり閉じていたはずの瓶の蓋がいったん開いてしまうと、中身が一気に溢れ出す。
あの日、あの時、幼かった俺の切ない記憶。
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