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「いえ、芙弥香さんは悪くないです」
芙弥香は目を細めて嬉しそうな笑顔を見せた。糸湖の胸はキュンと波打つ。この美貌で見つめられ微笑まれては老若男女問わずときめくのも無理はない。
「さ、座って。そうぞ、私の特製エナジードリンクよ」
祐貴と蓮に勧めたのと同じように芙弥香は糸湖にもグラスを差し出す。
「ありがとうございます! きれい!」
糸湖はグラスを両手で受け取ると、キラキラと揺らめく炭酸の泡と宝石のように輝くピンクの液体に見惚れた。
「でしょう! 見た目も味わいの一つですものね」
そう言いながら芙弥香はハンガーラックの衣装を手に取り糸湖に見せる。
「その会場の雰囲気を直に感じてから衣装を決めるようにしているの。だからいくつも候補を用意してくるのよ。好きなものを着て行ってちょうだい」
グラスの宝石を飲み干し糸湖は愛想笑いで首をかしげる。
「いや、それは……」
それらは全て桜羽芙弥香だからこそ着こなせる衣装だ。
糸湖が着れば間違いなくオッケーバブリー的なことになってしまう。
それでも芙弥香は嬉々として糸湖に似合いそうな衣装を選び、満面の笑みで振り向く。
「これが良いわ! イエローベースさんはオレンジでキュートさと快活さをアップさせるのがオススメよ!」
弾む声でそう言うと、芙弥香はソファに横たわる糸湖にシルク製のシフォン・ジョーゼットのワンピースをふわりとかけ、満足げに微笑んだ。
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