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「あら信也、出掛けるの?」
「ちょっと。昼飯までには帰るから」
朝食の後片付けをしていた母さんに断って家を出る。
昨夜降り出した雪は今もまだちらちらと舞っていて、景色の大半は白に塗り替えられていた。とはいえ急いで雪掻きするほどの積雪でもないから、休日の朝の田舎道に人影は殆どない。冷たくぴんと張り詰めた空気と辺り一面の雪が、冬独特の静謐さを作り上げていた。
しん、と静まり返る道を、黒のニット帽、ポケットにスキーグローブを入れたカーキのコート、紺のマフラーという出で立ちで歩いていく。さく、さく、と雪を踏む自分の足音が辺りに響いて聞こえるようだ。
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